私の留学までのストーリー

2015年の盛夏も過ぎたころでした。某医学部の大学院生3年目だった私は、卒業論文の基礎となるデータを取るための実験に忙殺されながらも、大学院生という一種の「モラトリアムな時間」を謳歌していました。

私の学んでいた大学院の研究室は、教授室のすぐ向かい側にありましたので、教授とはよく顔を合わせます。普段は会釈を交わす程度ですが、この日は違いました。

教授は私に語りかけ、このように言いました。

「留学してみるかね?」

このような時の返事は一つしかありません。某局の某ドラマのようだが・・・

「御意!」

このようにして、私のアメリカ留学が決まったのでした。

留学先として紹介されたのはニューヨーク市にある研究室でした。同じ教室の卒業生である先輩がポスドク(博士号を取った後の研究者)として留学しているところです。そのポスドクが2016年の秋に帰国することとなり、後任として推薦されたのでした。

大学院卒業後に留学すると決まってから

まずは、アメリカで行われる学会のついでに、その先輩に会いに行くことにしました。その流れで、留学先のボスと面接することになりました。2016年の3月でした。

先輩のアドバイスは

・卒業論文を早く仕上げろ
・年末は忙しいから、2017年が明けてからビザの準備をお願いしろ
・ニューヨーク情報はニューヨーク便利帳で調べろ

そこからは大変な日々がはじまりました。

私の大学院では、論文がアクセプト(この論文の内容であれば掲載OKという状態)にならないと学位審査をしてもらえません。(学位審査の基準としては厳しい方です。)最近の科学論文は、最初の投稿からアクセプトされるまで、半年から一年はかかります。その間にリバイス実験という、データの修正・追加を求められることが多いです。2017年の4月に留学しようと思うと、それまでに論文がアクセプトされ、望むらくは学位審査が終わっている必要があります。

逆算すると、2016年夏~秋には論文を投稿して、リバイス実験が始められる状態にしておくことが望ましいという状況です。

こうして、「のんびりモラトリアム」という状態から、現実に引き戻されたわけです。

基礎的なデータは出ていたので、周辺となるデータを出して、2016年の秋に、科学誌への投稿を始めましたが、ことはそのように簡単には進みません。人生は甘くはありません。3つの雑誌に掲載を断られ、ようやく4誌目にして、「掲載を考慮するからこういう内容のリバイス実験をしろ」と言われました。2016年の冬でした。

この時点であと3か月。難しいリバイス内容ではなかったので、1,2か月でリバイス実験の結果が出たのは幸運でしたが、最終的に掲載許可をもらったのは2017年の3月でした。(学位審査は留学前に受けることができませんでした・・・うちの大学、厳しすぎるよぅ・・・)

一方、ビザの件は先輩に言われた通り、2017年1月になってから先方にコンタクトして、ビザ関連を含む雇い入れの準備を開始してもらいました。

研究者の留学は、極言すると「自己都合」なので、人事部がサポートしてくれるわけではありません。ビザ申請から留学準備まで、全て自分でやらなくてはなりませんでした。

でもそのお陰で、アメリカ社会のシステムを知ることができたよ。

ビザ書類発行のため留学先に提出したもの

先方とのやりとりは、基本的にemailで行われました。まずはパスポートなどの身分証明書、推薦状、CV(履歴書)、学位証明書などを送りました。

推薦状は、大学の先生であれば慣れておられるので、すぐに書いてくれると思います。

CVを書くのは人生初でした。最初はどうやって書いたらいいのかチンプンカンプンだったので、今から見返すとかなり恥ずかしい内容です。

CVの書き方

アメリカ人の書いたCVを参考にひな形を作ってみたよ。

CVとはアメリカの履歴書のことです。日本のような、特定の書式はありません。自分のアピールポイントをどんどん書いていく方式です。1枚の人が多いですが、2,3枚になっている人もいます。住所や性別、年齢を書く必要はありません。下のサンプルはアメリカ人の作ったCVを参考に作りました。

一番上は学歴であることが多いです。日本とは違い、新しいほうから書いていきます。

次はExperienceが来ることが多いです。自分の特技をアピールしましょう。研究者の間では、Research ExperienceとVolunteer Experienceを分けて書いている場合も多いです。研究者であれば、ここで自分が持つ実験スキルなどをアピールしましょう。何本の論文に共著者で入っているか、そこでどのようなことでContributionしたかなどを書けば十分なボリュームになると思います。日本人ではなかなかVolunteer Experienceがある人は少ないかもしれませんが、大学生や大学院生としてアメリカで留学を目指している人は、積極手ににVolunteer Experienceを積んでください。次のLeadershipははっきりした決まりはないですが、学会の会員であったり、委員会の委員長であったり、授業のアシスタントを務めた経験、NGOで勤めた経験や、起業経験などを書くことができます。大学院生や研究者であれば、次のPublicationやAwardをしっかり書くことが大切です。Awardは最終的に受賞できなくても、Finalistとして選ばれていれば書いても大丈夫です。

ビザ申請書類がくるまで

上に書いた書類、あるいは補助書類をいろいろと準備すると、最終的に雇用のオファーを頂いて、給与証明書や、DS-2019というビザ資格証明書がFedexで送られてきました。これまでの期間約1か月。これでもかなり早いほうだそうです。

幸い、私の留学先の担当者は仕事が早い人で、ビザ申請に間に合うように書類を送ってくれましたが、アメリカの事務作業は基本Slowなため、ビザ申請が渡米ギリギリになることも多くあります。私の知り合いには、4月留学開始予定なのに、6月になってもビザ書類が送られてこなかったという人もいます。

アメリカの研究室はどこも留学生welcomeだと思いますので、留学が決まれば早めに担当者に連絡を取って、ビザの手続きを開始してもらったらいいと思います。(私自身、年明けまで待たず、早めにビザ手続きをお願いしておいたら、日程的にもっと余裕のあった箇所もあります。)

トランプ大統領になってから、ビザが少し厳しくなっているそうです。知り合いの内科医は、ビザ発行が保留になってしまったそうです。特にHビザ(後述)はかなり条件が厳しくなっているようです。

お金の準備

留学にはまとまったお金が必要です。何よりも、最初の通過点である「ビザ取得」には「財力」がものをいいます。アメリカは移民の国ですが、その分不法就労に厳しい国なので、ビザの担当官の一つの判断基準は、申請者が「不法滞在しないか」「不法就労しないか」です。

私は600万円ほど用意しました。一番預金が多い時点で預金証明書(ビザ面接に必要な資資料の一つ)をゲットしました。アメリカの家賃の支払い(一年分前払い)をした瞬間にほどんどなくなりましたが。

面接官を安心させるためには、家族で留学する場合は数百万円、単身だと100万円程度の預金証明書をつくっておくと安全だと思います。

ビザ面接とその結果

私は幸い、即日承認され、ビザの貼付されたパスポートが4日で返ってきました。知り合いの内科医がビザ発給保留になったのを考えると、ビザ発給には日本での肩書よりも、周到な準備が大切なんだと思います。

そのほか

これ以外にも、銀行口座開設、家の契約、愛犬の渡米準備、アメリカへの所持品の準備などいろいろあって、本当に忙しかったことを思い出します。このブログは、私の経験を次の留学生に少しでも役立てたいという思いで始めました。

留学準備の記事を順番に読み進めていけば、スムーズに留学できるような構成になっています。アメリカ留学のみならず、アメリカへの赴任や旅行でも役立つ情報が詰まっていると思います。是非読んでみてください。ご質問やフィードバックがあれば、「お問合せ」からお問合せ頂くか、コメントをよろしくお願いします。励みになります。

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